大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和51年(特わ)3285号 判決

被告人

(一)

本店所在地 東京都江東区大島七丁目四二番一一号

株式会社大誠樹脂

(右代表者代表取締役清水静)

(二)

本籍 東京都江東区大島七丁目五七九番地

住居

同都同区大島七丁目四二番一一号

職業

会社役員

清水静

昭和八年一一月八日生

右被告会社株式会社大誠樹脂に対する法人税法違反被告事件、被告人清水静に対する法人税法違反、所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官神宮寿雄出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告会社株式会社大誠樹脂を罰金九〇〇万円に、

被告人清水静を懲役六月及び罰金四〇〇万円に

それぞれ処する。

被告人清水静において、右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人清水静に対し、その裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、東京都江東区大島七丁目四二番一一号に本店を置き合成樹脂の再生加工を営業目的とする資本金五〇万円の株式会社であり、被告人清水静は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括するかたわら、清水商店の屋号で産業廃棄物の回収及び再生加工原料等の販売を営んでいるものであるが

第一  被告人清水静は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部除外及び架空仕入の計上等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和四八年一〇月一日から同四九年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一三七、五一四、三五七円(別紙(一)修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同四九年一一月三〇日、東京都江東区亀戸二丁目一七番八号所在の所轄江東東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三八、一〇七、八二七円でこれに対する法人税額が一三、三一五、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五二、八三五、九〇〇円(別紙(二)ほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額三九、五二〇、一〇〇円を免れ

第二  被告人清水静は、自己の所得税を免れようと企て、売上を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ

一  昭和四八年分の実際総所得金額が一六、三八〇、〇八三円(別紙(三)修正損益計算書参照)であったのにかかわらず同四九年三月一五日、前記江東東税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が六、四〇一、二八〇円でこれに対する所得税額が六八四、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額五、六一三、六〇〇円(別紙(五)課税総所得金額及びほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額四、九二九、六〇〇円を免れ

二  昭和四九年分の実際総所得金額が三七、八二〇、四二二円(別紙(四)修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、同五〇年三月一四日、前記江東東税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一六、三三八、五四七円でこれに対する所得税額が三、六〇三、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一五、三八一、七〇〇円(別紙(五)課税総所得金額及びほ脱税額計算書参照)と右申告税額との差額一一、七七七、九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

冒頭事実及び全般にわたり

一  被告人の当公判廷における供述

一  同じく収税官吏に対する各質問てん末書及び検察官に対する各供述調書

一  被告会社の会社登記簿謄本

判示第一事実につき

一  収税官吏今井清水作成の昭和五一年九月一〇日付簿外売上金額調書(売上関係)

一  同じく昭和五一年一〇月七日付仕入額調査書(仕入高関係)

一  同じく右同日付外注費等否認額調査書(引取運賃、外注工賃、消耗品費、雑費)

一  同じく右同日付給料調査書(給料関係)

一  同じく右同日付受取利息調査書(給料、受取利息関係)

一  同じく右同日付簿外交際費調査書(交際接待費関係)

一  同じく右同日付法定福利費調査書(法定福利費関係)

一  被告会社に対する昭和五〇年四月三〇日付法人税決議書謄本(棚卸高、修繕費、減価償却費関係)

一  収税官吏今井清水作成の昭和五一年一〇月七日付事業税認定損・未納事業税調査書(事業税認定損関係)

一  江東東税務署長作成名義の昭和五一年一〇月八日付青色申告承認の取消し済証明書(青申取消益関係)

一  押収してある昭和五二年押第一九五の符四の49/9期法人税修正申告書(賃借料、水道光熱料関係)

一  押収してある同押号の符三の49/9期法人税確定申告書(公表金額及申告事実の関係)

判示第二事実につき

一  収税官吏今井清水作成の昭和五一年一〇月七日付売上金額調査書(売上高関係)

一  同じく右同日付給料調査書(給料関係)

一  同じく右同日付仕入額諸経費額(除給料)調査書(仕入高およびその他経費関係)

一  同じく右同日付減価償却額計算書(減価償却費関係)

一  同じく今井清水作成の昭和五一年一〇月一二日付給与収入計算書(給与所得関係)

一  押収してある前同押号の符五の昭和四八年分所得税確定申告書及び同押号符七の昭和四九年分所得税確定申告書(公表金額及び申告事実関係)

(法令の適用)

被告会社につき

判示第一の所為は法人税法一五九条、一六四条一項に該当する。

被告人清水につき

判示第一の所為は法人税法一五九条に、判示第二の各所為はいずれも所得税法二三八条にそれぞれ該当するので所定刑中いずれも懲役刑と罰金を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で主文の刑に処し、罰金刑の換刑処分につき同法一八条を、懲役刑の執行猶予につき同法二五条一項をそれぞれ適用する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村勲)

別紙(一) 修正損益計算書

株式会社 大誠樹脂

自 昭和48年10月1日

至 昭和49年9月30日

別紙(二) ほ脱税額計算書

株式会社 大誠樹脂

自 昭和48年10月1日

至 昭和49年9月30日

事業年度分

別紙(三) 修正損益計算書

清水静

自 昭和48年1月1日

至 昭和48年12月31日

別紙(四) 修正損益計算書

清水静

自 昭和49年1月1日

至 昭和49年12月31日

別紙(五) 課税総所得金額及びほ脱税額計算書

清水静

昭和48年分

昭和49年分

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例